|
|
海からそよぐ風に冬の寒さを感じるようになった12月初旬の今福港。国道204号を挟んで、港のすぐ裏の小径を登っていくと真新しい山門が目に入ってきます。今福港を見守っている愛宕山のふもとのお寺。ここが今回訪ねる宛陵寺。開山から600年以上の歴史を誇る曹洞宗の古刹です。現在、第32世浦辺世紀方丈(ほうじょう)が住職を務めておられます。 |
|
建立は松浦家の始祖である源久公の隠居屋敷を、その没後に寺院としたのが起源とされています。その後、應永12年(1405)玉林寺(佐賀県大和町)の大圭和尚によって曹洞宗寺として開山されたようですが、それ以前の正確な開山年代は史料が残っておらず不明です。また寺に現存する古文書(松浦市指定文化財)によると、当初の名称は「天漸院」とされていたそうですが、後に「陵(はか)に宛(あて)る寺」という意味から現在の名称に改められたそうです。 |
|
誠実な感じの世紀方丈。静かに、しかし確固とした信念が感じられる口調で話し始められました。
「お坊さんの役目というのはお葬式や法事の時にお経をつとめるだけではないのです。私たちの使命は、仏の教えをわかりやすく説き、広めていくこと。しかし現代の社会ではお寺と社会や家庭とのつながりが少なくなってきています。そのため出張してお説教をするという機会をいただいてからもう十年ほどになります。主に北松地域の公民館などから依頼を受けて、宗派や年代も超えて理解できるような話をさせていただいています。」
また宛陵寺で有名なのが毎週土曜日に行われている坐禅会。もうかれこれ十八年ほど続けておられます。
「『禅なくしては禅宗寺とは言えない』という思いから坐禅会を始めました。みなさんよく坐禅を誤解されていますが、坐禅を組んだからといって、すぐに何かが変わるということはありません。大切なのは坐禅を組むという時間のなかで、わがままを離れて心を自然の状態にすること、つまり自分を仏様の姿に近づけていくことなのです。ですからすぐに悟りを開くということなどないということがおわかりでしょう。また年越し坐禅会も行っています。この坐禅会に参加された方は優先的に除夜の鐘を撞くことができますよ。うちは百八つ限定ですので、ぜひご参加ください。(笑)」 |
|
20年近く宛陵寺におられる世紀方丈ですが、正式に住職となられたのは先月11月とのこと。真新しい山門などは住職就任に合わせてのことだそうです。
「観音堂を立て替える際、観音様にも新しくなっていただきました。新しく祀った威徳(いとく)観音様は日本ではあまりみかけないもので、蓮の葉の上で立て膝の非常にリラックスしたポーズをされている観音様ですよ。」
次に案内していただいたのは本堂。この本堂は嘉永3年(1850)に建設されたもので、天井にはさまざまな89枚もの絵が鮮やかな色彩で描かれています。そして本堂広間の横には坐禅室があります。 |
|
「やってみませんか?」と和尚に誘われ坐禅初体験。静寂の坐禅室で坐禅を組むと、このお寺が長い歴史のなかで檀家さんの強い信仰心に支えられてきたことが感じられました。 |
|
|
|
この記事は平成16年12月22日発行のメモリアルだより(松浦版)第5号に掲載されたものです。 |