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やわらかな春の日差しに輝く新緑が目にまぶしい4月下旬の午後。国道204号線を平戸方面へ車を走らせること約10分。集落も少なくなる山あいの地域、御厨町西木場地区に今回訪ねる圓福寺はあります。現在、住職を務めておられるのは第二十三世松浦法雲(ほううん)和尚。物静かな感じのご住職です。
「これからの季節は草取りが大変なんですよ」水やりの手を止めて出迎えてくれた住職に本堂へ招き入れられ、取材は始まりました。 |
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圓福寺の開山については、江戸時代(寛永年間/1624〜1643)、キリスト教への弾圧などを始めとした世情の苦しみを憂えた松浦党の流れをくむ人々が草庵を結び、そこへ師事する固岳英堅禅師(こがくえいけんぜんし)を招請したことに始まると伝えられています。つまり開山から約370年ほどの歴史を誇るお寺です。開基した松浦党の名前は明らかになっていませんが、お寺と国道を隔てた林のなかにある墓所には、開基の墓と伝えられる二つの五輪の塔が残されており、それぞれ銘が刻まれています。またお寺の裏手にある墓所には、元寇の頃のものと思われる小さな無縁仏の墓が無数にあるそうです。 |
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ツツジがまだ残る参道を登り切り、山門をくぐると大きなソテツが現れます。このソテツの門をくぐるとようやく現れる本堂、隣には「まどか保育園」。その前には、これまた大きなブーゲンビリアがそびえ立っています。
「ここは本当に自然が豊かなところで、子どもたちが遊ぶにはもってこいの場所ですよ。動物もたくさんいて、タヌキやキツネ、ウサギ、タカやフクロウなども見かけました。ただ残念なことに野犬やカラスの繁殖、そして人間による駆除のために最近では見かけなくなった動物も多いのですが。」
本当に自然豊かな圓福寺。周囲の森は、自然に親しみながら散策できるよう整備されています。木漏れ日を浴びながら歩くと自然の豊かさが一層実感できました。 |
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子どもの頃から仏教に親しんでもらおうとスタートしたまどか保育園。それ以外にもさまざまなことをやっておられます。その一つが毎週土曜日、園児を対象に行われる座禅会。
「もちろん最初は十分くらいから始めます。しかし徐々に慣れてくると30分くらい座禅を組むことができるようになるんです。大人顔負けですね。また檀家さんの親睦も兼ねて毎年夏、親子座禅会を行っています。その他にも週二回、園児から小学校1〜3年生を対象にした英語教室と音楽教室を行っています。お寺でやっているからといって敬遠せずに、気軽に参加してもらいたいですね。」
本堂を案内してもらうなかで目を惹いたのが大広間のふすま。1枚1枚に豪快闊達な書が貼られています。
「これは私の師匠でもある亀乘老師(きじょうろうし)が書かれたものです。般若心経の文字が書かれているんですが、面白いのは書いた道具。これ掃除用のモップで書いてあるんですよ。」弘法筆を選ばずとはこのことか、と思いながらシャッターを切りました。 |
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保育園の前にあるベンチにふと目をやると、日光で虫干しされている子どもたちの小さな歯ブラシ。やさしい住職と豊かな自然に育まれた子どもたちは将来、立派にこのお寺を、このまちを支えてくれることでしょう。 |
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この記事は平成17年5月8日発行のメモリアルだより(松浦版)第7号に掲載されたものです。 |