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山を見やれば紅葉が鮮やかな11月中旬の午後。佐世保方面へ車を走らせると口石小学校の手前、左手の小径にお寺の銘を刻んだ石柱があります。ここから家々の間を少し歩けば目の前がぱっと開け、山門と本堂が現れます。
ここが今回訪ねる正福寺。現在、住職を務めておられるのは第16世 清原恵雄(けいゆう)住職。まだ30代の若くて元気な住職です。 |
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開基は天正十一年(一五八三)、江州(滋賀県)にある称福寺の浄慶上人が修行のため移り住んだのが始まりです。当初は布教所として八口免に開かれ、元禄三年(一六九〇)第四世浄尊上人の時に現在の地へ移り、正式に浄土真宗のお寺となりました。それから約三百年以上の間、正福寺は大きな災害や戦乱にも巻き込まれることなく、口石免の真宗信仰の拠り所となってきました。 |
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カジュアルなファッションに身を包んだ住職は休日のマイホームパパといった感じです。その理由は…。
「実は清峰高校サッカー部のコーチをかれこれ十年ほどやっているんですよ。そのため普段からこういった服装が多いんです。もちろんお勤めの時は僧侶の格好ですよ」
ほとんど毎日、夕方の数時間、クラブの指導を行っているという住職。時にはケガをされることもあるのだとか。
「サッカーのコーチというと本業とかけ離れているため想像がつかないかもしれませんが、門徒さんのお孫さんが部員だったり、私がケガで通う病院が共通の話題になったりするんですよ。これもお寺が地域に根付くための活動の一環だと思っています」 |
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正福寺には珍しい活動として門徒さんによる仏教雅楽というものがあります。平戸藩陣太鼓や鉦鼓、龍笛などで構成され、法要や結婚式などの行事の際に荘厳な調べを奏でているそうです。明治時代に有田のお寺から伝えられ、途中一時中断したものの、現在までずっと続いています。現在ではお寺以外にハウステンボスで演奏するなど、その活動の場を広げています。もちろん住職の結婚式の際にも演奏し、厳粛な結婚式を大いに演出したそうです。 |
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若い住職だけあって信仰に対する考え方も現代的で柔軟です。
「今の人々は仕事を持って忙しい毎日を送っていて、常日頃からお寺に足を運ぶのは難しいでしょう。せいぜい盆正月のお墓参りが精一杯なはずです。しかし高齢になれば、自然とお寺に足が向くようになるでしょう。また生死に直面したり、お亡くなりになられた時のご縁というものもあるでしょう。信仰というのは強制できるものでもありませんから、そういったご縁でもいいと思っています。また浄土真宗というのはとてもシンプルな宗教ですから、現代にとてもマッチしていると思いますし、逆に現代の方に受け入れられやすい布教活動というものも必要だと思っています」 |
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庭を見てくださいという住職に導かれ案内されたのはオシャレなイングリッシュガーデン。見学者も多い自慢の庭だとか。若い人の宗教離ればかりがクローズアップされますが、時代に合ったお寺というものも求められているのかもしれないと実感させられた取材でした。 |
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この記事は平成17年12月4日発行のメモリアルだより(佐々版)第3号に掲載されたものです。 |