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松浦市の中心部にあるMR松浦駅。その駅舎左の自転車置き場がある脇道にひょいと入り、静かな路地にたたずむネコの視線を感じながら歩くこと1分。集落の中にこじんまりしたお寺が現れます。ここが今回訪ねる妙善寺。交通の便も非常によい、日蓮宗のお寺です。
案内された応接室に現れたのは、現在のご住職を務めておられる第四世、辻本法雄(ほうゆう)上人。短髪に薄い口ひげの、ちょっとダンディなお坊さんです。 |
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法雄上人がまだ四代目であることからもわかるように、妙善寺は開山からまだ116年と松浦市内では最も新しいお寺です。その起源は日蓮宗の布教活動の一環として伊万里市の遠照院(おんしょういん)日静上人が教会所を設立し、開運結社としたことにあります。歴史は浅いですが、地道な活動の成果によって、徐々に檀家さんも増えているそうです。
「日蓮宗の法華経は力強いお経だと言われます。そのせいかわかりませんが、江戸時代には役者さんなど芸道に励む人々に人気があったようです。最近では美空ひばりさんや力道山などがそうだったですね。」
以前は県内でも有数の信徒数を誇る大村市におられ、現在も北松地域の役職を務めておられるという法雄上人。親しみやすい話題から取材は始まりました。 |
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日蓮宗でも他の宗派同様、教えを次世代へどのように伝えていくか課題となっており、そのために青壮年部を設立する準備にお忙しい毎日とか。
「例えばこの松浦・平戸・北松地域では、お葬式をやると檀家さんが減るんです。理解しがたいことだと思いますが、本当です。つまり子どもたちがさまざまな事情からふるさとの外へ出てしまって戻ってこないから、親御さんがお亡くなりになるとそのまま檀家さんが減ってしまうわけです。ですから教えを伝えることなど到底無理なわけです。青壮年部に賛同していただいているのは、子どもの頃から祖父母に手を引かれてお寺参りをしていたような方です。そんな方が青壮年部で先頭に立って、子どもたちと一緒にお寺へ来て欲しいと思っています。最初は手を合わせるだけでもいいんです。もっとお寺を身近に感じて欲しいですね。現に『精進料理を食べたいから』という理由だけで喜んで来る子どももいるくらいですから。」 |
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また日蓮宗には熱心な信者さんが多いそうで、位牌堂には檀家さんがよくお参りに来ているそうです。
「なにはともあれまず手を合わせて拝むことが大切なんです。金髪で身だしなみもあまり良くない若い人が、亡くなったご両親のためお参りに来るんですよ。そんな姿を見ると、私も頑張って教えを伝えていこうという励みにもなります。」
最後に住職は、青壮年部の設立に伴って地域とのコミュニケーションにもっと力を入れ、地域の方々にお寺を別荘のように利用してもらえるようにしていきたいと締めくくられました。 |
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境内では数匹のネコたちがひなたぼっこをし、コスモスがそよ風に揺れる10月の午後。柔らかな日差しを受けて妙善寺は静かに、そして少しずつ地域に大きな根を張っているように感じられました。 |
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この記事は平成18年1月15日発行のメモリアルだより(佐々版)第4号に掲載されたものです。 |