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猛暑が終わりを告げ、ようやく朝晩過ごしやすくなった9月の初旬。早朝のお寺に作務衣を着た檀家さんが1人、また1人と集まってきます。まだ空は半分ほど朝焼けの綺麗なピンク色。鈴虫たちが鳴いている境内の砂利を踏みしめ、墨で大きな円が描かれた暖簾をくぐり本堂へ足を踏み入れると、目に入るのは背筋を伸ばし、ひたすら坐禅を組む姿。そこにはピンと背筋が伸びるような凛としたなかにも心が穏やかになる、そんな空気が漂っていました。
ここが今回紹介する清浄寺。江迎町文化会館そば、国道2204号線に面したこぢんまりとしたお寺です。現在、住職を務めておられるのは第三世、村畑保幸(ほこう)さん。笑顔が絶えない活発な印象のご住職です。 |
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清浄寺は昭和に入ってから建立された新しいお寺です。戦後間もない昭和24年、炭坑全盛期の江迎町に昔からあった観音堂を拠点として先代の住職が活動を開始。昭和34年には本山より山号と寺号を授かって正式にお寺として出発しました。その14年後(昭和48年)、北松禅センターとして再建され、現在に至っています。 |
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坐禅会の後、参加者の方とお茶を飲みながら取材が始まりました。
「坐禅では手足を組んで自分勝手な動きを封じます。そうすることで様々な心の迷いをなくします。そして一生懸命坐禅をするのです。この目の前のことを一生懸命続けるというのは仏教に限った話ではなく、一般生活でも大切なことですよね。しかし一人で続けるのは簡単ではありません。こうして参加者が何人もいるからこそ続けられるんです。私が続けられるのも皆さんのお陰です」
その話の通り参加者の皆さんはもう何年も続けていて、中には毎日佐々から通っている方も。話を伺うと「心が穏やかになって普段もイライラしたりしなくなった」「生活にリズムが出てきた」など口々にイキイキとした表情でその良さを話されました。 |
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また十五年前から、お袈裟を縫う会(福田会)も主催されています。「お袈裟って買うものじゃないんですか?」というとんちんかんな質問に笑って住職は答えました。
「実は学生時代にお袈裟を縫っている先輩の姿を見て、私も同じ質問をしたんですよ。もちろんこっぴどく叱られましたけどね。(苦笑)本来お袈裟は作るものなんです。一針一針心を込めて縫い上げるのは根気の要る作業ですけど、参加されている皆さんはとても楽しげですよ。古布の成仏にもなりますしね」 |
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「時代とともに考え方や価値観も変化し、良くも悪くもそれが大人だけでなく子どもにも影響しています。しかし時代や宗派が変わっても、この瞬間を一生懸命生きることが大切だということに変わりありません。そのことを常に心に留めて、子どもたちにも伝えたいですね」
お子さんがまだ小学生に通っているとのことで、話す表情は父親のそれになったようにも見えました。
取材中に何人もお参りに訪れる人々と住職の間には笑いが絶えません。そんな様子を見ると、地域へ根付くのは歴史や規模は関係ないのだと教えられました。 |
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この記事は平成18年10月8日発行のメモリアルだより(佐々版)第11号に掲載されたものです。 |