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国道204号を本田原免から旧道へ入り、佐々川沿いに走ること約3分、山手になにやら賑やかな斜面が見えてきます。そばまで行って見てみると、無数の石仏の脇に1本ずつ立てられた綺麗な風車(かざぐるま)でした。ここが今回訪ねる延命寺。水子供養で良く知られるお寺です。
現在、住職を務めておられるのは第三世 辻寿香(じゅこう)さん。ユーモアとやさしさあふれる語り口がチャーミングな尼僧さんです。 |
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延命寺は大正9年(1920)、愛媛県から来た西山秀山によって開山されました。その後しばらく住職不在の時期が続き、佐世保の大智院から二世 川久保寿海が派遣され中興。その後、幼少の頃から二世の仏弟子だった辻寿香さんが跡を継ぎ、現在に至っています。 |
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取材のために通された本堂には住職の他に女性が3人。常に誰かがお寺の世話に来ているそうで、和やかに取材が始まりました。
「私が尼僧だということもあって心やすいのでしょう、皆さん口伝えに聞いて県内外から毎月数名の女性が水子供養に来られています。どんな事情があれ、自分の身体に宿った命を好きで失う人はいません。しかし残念なことですが、闇に葬らなければならない事情があることも事実です。水子のため、そしてご自分の悲しみと傷を癒すためにも供養は必要なのです。表に飾っている風車は供養した水子に(この世へ)戻ってくる目印にしてもらって、遊んでもらうためのものなんですよ」
寒風に吹かれカラカラと回る風車は全部で五百本程度あり、すべて信者さんから供えられたもの。毎年11月から3月頃まで見られる神田免の風物詩です。 |
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地域の人が自然に立ち寄り、情報交換や憩いの場となっている延命寺。大人だけでなく、中学生や高校生も悩み相談に来たりすることがあるというので驚きです。
「両親や友達には相談しづらいのでしょう。恋愛やいじめの相談に来るんです。私もいろいろなアドバイスをしてあげるのですが、その後に般若心経を一緒に唱えるんです。読経の後『心がスッとした』と言うんですね。いつも感心すると同時に、世間で言われているよりも純粋な心をちゃんと持っていると思いますよ」 |
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地域のみんなの心の拠り所になっているルーツはどうやら先代の教えにありました。
「私の師匠は常々、死んだ人より生きている人を助けなければいけないよと言っていて、地域の人にも慕われていました。私もその教えを守っています。生活保護を受けている方の葬儀では、お寺から参列者に料理を振る舞ったりもするんです。その代わり、私も地域の人にさまざまなことで助けられながら生きています。つまりお互い様なのですよ」 |
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春と秋のお彼岸には初代住職が始めた八十八ヶ所巡りが行われています。みなさん信心深いのはもちろんですが、それ以上に人と人、心と心でしっかり結ばれている。そんな温かさが感じられました。 |
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この記事は平成18年12月17日発行のメモリアルだより(佐々版)第13号に掲載されたものです。 |